介護職場の労務改善

介護職場の人手不足や離職率の高さはもはや常識となっていますが、その常識をくつがえすのは、決して難しいことではありません。
働きやすい職場、働きが報われる職場をめざして、本会では独自の提案を行ってきましたが、導入していただいた事業所では着実に成果があがっています。

事業の発展はまず足元から

私たちは、介護事業の拡張のご相談をお受けした時には、まず職場の現状の改善を図ることから始めるようお奨めしています。
と言うのも、いまや介護ビジネスの最大の壁は人材難であり、事業を拡張しても、近い将来にマンパワーの不足から立ち往生しかねないリスクがあることも念頭に置かねばならないからです。
こうしたリスクを避けるためには、職員の処遇・勤務条件の改善により定着性を高め、より困難な業務にも対応できる態勢をつくりあげることが、どうしても必要となります。

むらのない勤務・4勤2休制の奨め

「明日も全員そろって出勤してくれるか心配だ」という施設長、「私がいま辞めないのは、残るみんなに迷惑がかかるから」という介護職員・・・いずれも身の回りで現実にあった話です。
私たちが介護事業所の経営改善を引き受ける時には、まず事業主や管理者を除いた現場のスタッフとの車座の話し合いから始めますが、そうすると日ごろの不満が堰を切ったようにあふれ出てきます。
スタッフたちの不満は、いくつかのパターンに分けることができますが、その中には、根が深く時間をかけて解決しなければならないものもあれば、比較的単純でただちに解決できるものがあります。

簡単に解決できるもののひとつが、勤務条件の改善です。
事業主や管理者の方々にまず考えてほしいのは、規則的な勤務体制の確立です。
365日・24時間型の介護職場の疲労感の元凶が、職員の生活のリズムを無視した不規則な勤務ローテーションであることは言うまでもありません。
こうした現状を改善するために、私たちが提案するのが「4勤2休制」です。

365日・24時間型の職場の場合、週休2日制のもとでは、職員に公平に土・日・祝日の休みを割り振ろうとしても、どうしてもうまくいきません。
その上に職員の事情に合わせて年休をはめこむことになると、勤務ローテーションのねじれはさらに大きくなっていきます。
こうした勤務編成の苦労は、「4勤2休制」の採用によって一挙に解消できます。

「4勤2休制」では、平日と土・日曜および国民の祝日の区分をなくして、次のように4日働き2日休むことの繰り返しが基本となります。

ローテーションの一例

「4勤2休制」のもとで、勤務ローテーションが規則化されれば、結果的に時間帯ごとの職員配置に欠員もなくなり、残業時間も減少します。
事業主や職員にとっても先々の勤務日の見通しが立ちますから、予定が立てやすく、年休の調整もしやすくなります。
また、人手不足の解消をめざす場合にも、やみくもにパート職員で穴埋めを図るだけでは、本当の問題解決にはなりません。
まず規則的な勤務ローテーションを確立した上で、どの時間帯にどういうタイプの職員が必要かということを見定めて、計画的に手当てを進めていかねばなりませんが、その際にも「4勤2休制」は非常に役立ちます。

なお、週休2日制の場合、年間の休日(土・日曜と国民の祝日の合計)は120.3日ですが、「4勤2休制」では121.7日となり、さして大きな違いはなく、労使双方に受け入れられるはずです。

オーバーワークの解消・専任夜勤制の奨め

365日・24時間型の職場では、夜勤職員の配置が欠かせません。
多くの職場では、日勤・夜勤混合の勤務ローテーションを取っていますが、生活のリズムが崩れるために職員に敬遠され、離職や募集難の原因となっています。
こうした問題点を解決するために、望まれるのは専任夜勤職員の配置です。
夜勤が固定化すれば、その他の職員の勤務時間はおおむね午前7時~午後9時に収まることになり、職場全体がとても働きやすくなります。
専任夜勤職員の確保にあたっては相当の待遇が必要となりますが、それだけのメリットは十分にあります。

子育てと仕事の両立・“子連れ勤務”のすすめ

子育てと仕事の両立

これは決して偏見ではないと思いますが、従業者にシングルマザーが占める割合は、介護職場は他の業種に比べて総じて高いように見受けます。
シングルマザーではなくても、中学生以下の子供を抱える人たちにとって、365日・24時間型の職場は長らく勤めるには辛いものがあります。
こうした子育て世代が少しでも働きやすくなるようにと、保育所・幼稚園・小学校の終了後、職場に子供たちを迎え入れ(勤務時間内でも子供たちを迎えに行けるようにしていましています)、保護者の職員の退勤時間まで一緒に過ごせるようにしている事業所がああります。
土日・祝日の勤務日には、子供連れで出勤することもできます。
同僚たちも、職場の中の子育てをわがことのように温かく支えていますし、家族と離れて過ごす入居者には、目の中に入れても痛くないほどの可愛さのようです。
子供たちを中心におのずと笑顔が生まれ、コミュニケーションが拡がる・・・そうした職場がスタッフにとっても、利用者にとっても居心地のいいものであることは言うまでもありません。
そして、それを知った“ママ友”の中には、同じ職場に就職を希望する人も現れてきました。

介護という職場は、人と人の思いが通い合う場所です。
“子連れ勤務”は、職場の規律を乱したり、効率を落としたりするのではなく、逆に一段と職員のモチベーションと高めていくことにつながるのです。

パート職員の戦略的活用・ユニット式勤務ローテーションの奨め

ここ1~2年、県内の介護求人をめぐる事情は急速に悪化しています。
いままで本会では、正規職員中心の少数精鋭型の勤務編成を推奨してきましたが、このような事情のもとでは、質的にも、量的にも十分な介護人材を確保することは大変に困難となっています。
しかし、その一方で、短時間の勤務を望む“潜在介護福祉士”・“潜在2級ヘルパー”については、かなりの数が存在することが確認されています。
今後の介護事業所の運営にあたっては、これらの“潜在介護福祉士”・“潜在2級ヘルパー”の希望する条件を満たす勤務体制と処遇を用意し、就業意欲を喚起することが欠かせません。

おりしも、「パートタイム労働法」が改正され(平成27年4月より施行)、パート労働者の公正な待遇を確保し、納得して働くことができるようにすることが、事業主に義務付けられることになりました。
本会では、このことを前向きにとらえ、パート職員のモチベーションを高める「非正規職員向け給料表」を作成し、会員事業所に採用を働きかけています。

同時に、非正規での勤務を余儀なくさせている‘子育て’や ‘介護’などの家庭事情にも配慮し、これらとの両立が可能な「パート職員・ユニット式勤務ローテーション」の採用をお奨めしています。
ユニット式勤務ローテーションの一例

※パート職員の勤務時間の目安は、“103万円の壁”を考慮し、1日あたり5時間、1月あたり75時間(3勤3休)を目安とする。
※正規職員3名のユニットをパート職員5名のユニットで代替することを基本とする。

モチベーションアップ・賃金改定の奨め

労務改善の終着地点は、言うまでもなく賃金の引き上げです。
ここ1~2年、県内の介護従業者の賃金水準は着実に上昇してきていますが、他の業界に比べればまだまだ低い水準にあります。
賃金の引き上げはいちばん難しいことのように思えるかも知れませんが、要は事業の収益力を高め、業務のロスを極力少なくすることから生まれる原資を職員に配分していくということです。
私たちがそう言い切れるのは、他の業種ならともかく、介護現場には合理化の余地がまだまだ多く残されているからです。

しかし、実はそれ以前の問題が残されています。
驚くことに、県内の介護事業所の中には体系的な給料表を持たないところが少なくありません。
自分の賃金がどのような根拠によって定められているか、将来の昇給をどう期待できるかが不明朗な職場に対しては、誰しも愛着を抱くことはできません。
本会では、職責・資格・能力・経験年数に応じて格付けできる介護職員標準給料表を作成して、会員事業所に提供しています。