介護ハラスメントを考える

介護現場では、性的な嫌がらせ、暴言・大声、暴力行為、無理な要求などの<介護ハラスメント(ケアハラ)>が、日常的に 横行している。

覚えている人も多いはずだが、私は平田市長を勤めていた二十数年前、酒興から100円を賭けて女性のお尻を触るという愚行 を冒し、“セクハラ市長”という不名誉な烙印を押されたことがある。

こうしたことがあってもさいわい再選させてもらった私は、以後、人権の尊重を胸に刻んで行動してきたつもりだが、それだけにケアハラは見過ごすことができない問題である。

率直に言って、私ら団塊の世代から上の世代では、個人差はあれ、他者の人権に鈍感な傾向があるのは否めない事実である。

だから、いまどき取り上げられる各種のハラスメントについても、本質的な面で理解できていないことが多い。

こういう高齢者たちに対する再教育が大切であることは言うまでもないが、それでは、すぐにどれだけの成果を望むことができるかと言えば、「日暮れて道遠し」の感があるのも確かだ。

厚生労働省も、今年からようやく介護ハラスメント対策に乗り出してきた。

その『介護ハラスメント対策マニュアル』には、それなりの対応の手順が示されているが、しかし、現場での実際の対応はそうたやすいものではない。

介護保険法では「介護サービス事業者が正当な理由なくサービス提供を拒んではならない」と規定されており、この趣旨からは ケアハラを理由とした契約解除はできないと解釈される。それどころか、対応がまずければ、苦情処理の対象とされるおそれもある。

こうした事情から、利用者からケアハラを受けても、悶着を起こすより自分さえ我慢すればと考える職員も少なくないし、家族とのトラブルをおそれて、職員をなだめにかかる管理者も見かけた。

そうした腰の引けた扱いが加害者を甘えさせることになるにしても、当事者の苦労が分かるだけに一概に責めることもできない。

しかし、また、認知症その他から生じる情緒不安定が原因のケアハラはまだしも、故意・悪質なケアハラを野放しにしていたら ストレスを抱える職員の悩みは、いつまで経っても解決できない。

職場ハラスメントの解決の基本は“泣き寝入り”をしなくて済む環境をつくることにある。
残念ながら現在、ケアハラに対する介護事業者の足並みはバラバラだが、そろそろペナルティを含めた対応のありかたを考えるべき時期に来ているのではないだろうか。